すみれ(菫)

吉本隆明/詩/大正炭鉱闘争/共産主義者同盟叛旗派/

2023-01-01から1年間の記事一覧

吉本隆明『擬制の終焉』と『自立の思想的拠点』

吉本隆明『擬制の終焉』(現代思潮社、1962)と『自立の思想的拠点』(徳間書店、1966)とが、私がずっと注目してきた吉本隆明の政治的著作だ。『擬制の終焉』には、「擬制の終焉」、「前衛的コミュニケーションについて」、「葬儀屋との訣別」など、『自立の思…

幾らかの詩人は神であることをやめてしまった。

幾らかの詩人は私にとって神であることをやめてしまった。未だ神であるのは歌手Mと思想家Y...。

Ernauxian(エルノクシアン)

実存的にインパクトを受けた小説の中の一つ、『ある女』(アニー・エルノー)をもう一度読んだ。やっぱり素晴らしかった。私にとってのみ。出身階層からの離脱ということを真に考えたフランスの小説家、アニー・エルノー(1940-)の思考様式を範とする、Ernauxia…

(分かってもらえる自信がないこと)

分かってもらえる自信がない。けど、書く。吉本隆明の言っていることを分かっている人はいるのか。アニー・エルノーやピエール・ブルドゥーが言うフレーズを、私以外に分かる人はいるのだろうか。アニー・エルノーも、ブルドゥーも、分かってもらえないこと…

(どうでもいい私のこと)

「書くとは裏切る行為である」というアニー・エルノーやジャン・ジュネ、ピエール・ブルドゥーなどの実存についてもう一度、考えてみたいと思う。このままだと何か立派にも文章を書き始めてしまいそうなのだ。でも何かやはり書くということに対して階級離脱(…

吉本隆明の対幻想論が分かったのはいつだったか

吉本隆明の『共同幻想論』はさっぱり分からないが、はっと分かる瞬間がある。誰かと話すとき、その人と二人でいるときにその人に話そうと思うことやその人との関係というものと、3人以上(=社会)で話すときとの間に、私だけが感じる決定的な差異を感じざるを…

『平成転向論』

小峰ひずみ(1993-)さんの著書に、今運動を論じる文体を見た。これができたのか。すごい。

精神分析の抵抗。

精神分析の抵抗。最も重要なテーマ。工藤顕太『フロイトの抵抗 終わりのある自己分析と終わりのない自己分析』(『思想1180号』) そろそろ詩的散文か詩を書かざるを得ないほど詩というものへの欲望が高まってきているかもです。

線路の外の風景

苛立って決められて歩くのが悔しかったんだ。 何も疑わずにレールをただ素直に進んでいく娘たちがぬるく見えた。 あああれから紆余曲折をえて。 こころは今どこにあるの。 ......とても分かる。

絶対的な寛容思想

吉本隆明の核心は、絶対的な寛容思想ということにつきる。倫理的な責めに対して全面的に寛容。『吉本隆明全質疑応答II』(論創社)に、障害者との対話が収録されている。このかなり劇的な対話の場面が、吉本のすべてを凝縮していると言ってもいいと思う。

名著だ(『超人 ナイチンゲール』栗原康)

『超人ナイチンゲール』(2023,栗原康,医学書院)を読んでいる。今、半分くらいまで来たが、とてつもなく面白くて興奮しています。シモーヌ・ヴェイユや中井久夫、ヴァージニア・ウルフなども出てきて、まとめ方と盛り込み方がすごく上手い。 自然災害に作物の…

茉莉花吉本隆明名編選(2023•12•1)

茉莉花吉本隆明名篇選(2023•12•1)「「四季」派の本質」、「情況とはなにかI 知識人と大衆」(既出)、「前衛的コミュニケーションについて」(既出)、「転向論」、「芥川龍之介の死」(既出)、「日本のナショナリズム」、「想い出メモ」

「話存在」(『言葉にとらわれた身体』エレーヌ・ボノー)

『言葉にとらわれた身体 現代ラカン派精神分析事例集』(エレーヌ・ボノー著、誠信書房) 精神分析における「話存在」と身体とについて、綺麗に解説されていた。 「ラカンの理論において話存在というシニフィアンが考案されたおかげで、無意識と身体をとらえる…

他人の言葉を違和感なく使うこと

他人の言葉を違和感なく使うこと。 本当に伝えたいことがあったとき、何か話すたびに、何かが違うと違和感を覚えてしまうことはないか。 吉本隆明は、他人のものである言語において、本当に言いたいことを言おうともがくことについて、言語によって考えた。 …

五月革命、新たな主人、大学のディスクール。—精神分析の終結という出来事を内に含む革命とは何か?

"大学のディスクールはある意味で主のディスクールをいっそう強固なものにする"(ピエール・ブリュノ,『精神分析の再発明』p.302より又引き) 学生らの過激なまでの自由の欲求がネオリベラリズムとして回収された五月革命が生み出した大学のディスクールは、「…

『吉本隆明 詩人の叡智』菅野覚明

『吉本隆明 詩人の叡智』(講談社学術文庫,2015,菅野覚明)という本を読んだ。吉本隆明の思想はなぜ掴みにくいのか、一般的な人文学の感覚からしてどういう点で特殊なのか、どのような意味で偉大なのかということが明確に言語化してあり、非常に秀逸な本であっ…

竹内芳郎と吉本隆明

竹内芳郎と吉本隆明の論争の大枠がだいたいつかめてきた。これは、50年近く前の論争を今振り返ってみて言えることだが、竹内芳郎のある本のページを読んで、どうも何やらおかしくなってしまい笑ってしまった。 ↓竹内芳郎『イデオロギーの復興』p.86,87 竹内…

フーコー「知識人と権力」、「人民裁判について」が素晴らしい。

『フーコー・コレクション4 権力・監禁』(ちくま学芸文庫)に収められている「知識人と権力」と、「人民裁判について—マオイスト(毛沢東主義者)たちとの討論」が素晴らしい。なされていることは、まさに<革命(運動)の革命>である。 ひとつめの「知識人と権力…

動物の権利について

人間は一方で権利を有し、他方で義務を有するというのは意味をなさない。権利や義務といった語は観点の相異を示すにすぎない。このふたつの語の関係は客体と主体の関係である。個としてみた人間にはもっぱら義務しかない。そして、その義務のなかにはその人…

吉本隆明断片

「しかし『遠野物語』の<予兆>譚が語っているのは個体の幻想性と共同の幻想性が逆立する契機をもたないままで接続している得意な位相である。これはおそらく常民の生活の位相を象徴している。」(『共同幻想論』) 常民の個人幻想は共同幻想と逆立せずに接続し…

吉本隆明「前衛的コミュニケーションについて」

吉本隆明で、さしあたり読むべきものがあるとしたら、『共同幻想論』でもなく、『言語にとって美とは何か』でもなく、まずは「前衛的コミュニケーションについて」(1961,『吉本隆明全集6』に収録)だ。当時の革共同を頭とする「前衛」主義者に対する完膚なき…

なぜわたしはあの(この)ような幻想(ファンタスム)過程に入る(入っていた)(入っている)のか。

「わたしの当時の<天皇のため>には、天皇個人の人格がどうであるかという問題は含まれていなかった。また天皇が現人神であるということを、科学的には信じていたわけではない。ただわたしにとって、ひとつの<絶対感情>がありさえすればよかったのである。………

2023年9月1日関東大震災百周年朝鮮人犠牲者追悼式典(横綱町公園)

報告が遅れましたが、9月1日に墨田区横綱町公園で行われた朝鮮人犠牲者追悼式典に参加してきました。100年前の1923年、関東大震災後の流言により、多くの朝鮮人や社会主義者、労働運動家などが虐殺されました。官憲の権力犯罪はなかったことになりました。今…

10•24国会前抗議行動に参加して。

https://x.com/studentsmayday/status/1716345455700013283?s=46 10月24日火曜日、国会前にて「日本政府によるガザ攻撃加担に反対する学生有志」による抗議行動が行われた。 今回の抗議行動は、「日本政府はガザの虐殺に加担するな!」という方向性で企画さ…

2022年10月1日に別のブログに投稿した文章

本稿では、吉本隆明の『転向論』そのほかの著作を少し変則的に読んでみます。まず、吉本隆明の『転向論』から得られる教訓のひとつは、「一度インテリ上昇をはじめてしまったプチブル・非インテリ階層出身者は、堂々と上昇すべし」ということです。「プチブ…